■ドライバーで稼ぐ目標
なでしこTOKYO 事業推進部の村松慶子マネージャーは、
オフィスでの事務と新人ドライバーの教育係を兼務する。
もともとは同社専属の軽貨物ドライバーとして同社の荷物を運んでいたが、
現在は新人ドライバーの車に同乗し、
キャリーウーマンに仕立て上げるミッションがある。
同社の女性ドライバーはシングルマザーが多い。
当然のこと、子どもの学校行事には参加したいと彼女らは考えるが、
仕事が休めず欠席となることは大きな負担となってしまう。
そこで、行事日程がわかっている場合、
シフトで対応できるようにするのも村松マネージャーの心配りとなる。
「ドライバーさんには決して無理をさせたくない」と
村松マネージャーが語るのもなでしこTOKYOらしい。
同社は荷主などに向けられている一方で、
従事するドライバーに寄せられているためだ。
ドライバーの在籍数は限られる一方で、
案件が増加する今、シフト対応には苦労も多い。
シングルマザーは子育てで大変というイメージがあるが、宮内社長は
「子供が小さいのは赤ちゃんから小学校に上がるまでの一時期だけ。
そこから先の方がお金もかかり、大変になる。
セカンドキャリアのほうがはるかに長い」と話す。
だから、ドライバーで稼ぐ必要がある――。
その目標に向かい、同社はドライバーの独立や開業サポートも行う。
特に女性が長期的に働ける環境づくりに最も注力するという。
■託児所設置の盲点
他の物流会社同様、同社の大きな課題はドライバーの採用だ。
求人誌に出稿しても応募は男性のほうが多く、
ドライバーの友達紹介制度などで募るが、
いまだ大きな効果は得られていない。
「運送業の求人を女性が見る機会が圧倒的に少ない。そこが難しい。」
「潜在的に当社のファンになってくれるよう、動かざるを得ない」
と宮内社長。
その一環で、シングルマザー向けの情報発信サイトを構築し、
女性ドライバーの座談会を行うことで情報を発信している最中だ。
宮内社長は雇用対策の秘策を心の中に秘めていた。
それは、物流と密接な関係にある託児所建設構想だ。
大きな物流センターをファンドが開発する場合、
近隣に住む主婦層の雇用を創出する目的で託児所を設置するケースが増えてきた。
物流業界ではドライバー不足が取り沙汰されることが多いが、
庫内で働くパート女性の確保も深刻な問題となる。
託児所を設置することで、
女性が働く環境が整うと見られるが、
実は子どもが6歳までの期間しか使えない。
満員の通勤電車で千代田区のオフィス近くまで子供連れで通うことは
「現実的ではないかもしれない」(宮内社長)として、
振り出しから再度検討していく方針だ。
宮内社長がもっとも期待する「女性らしい」案件は館内物流だ。
徐々に案件数は増えているが、特に注力していきたい分野だという。
大きなオフィスビルなどで台車などを使い、荷物を運ぶこと。
力仕事ではなく、運転免許は不要、
また老眼や夜の運転の危険性もないため、
女性に適した物流案件とみる。
「60歳になっても、65歳になっても、
『なでしこTOKYOなら働き続けるよね』
というビジネスモデルに仕立てていかないといけない。
新しいキャリアとして、物流業界に入り、
きちんと生計を立てていけるようにすることが目的」
この宮内社長の思いが認められ、
2018年には第10回千代田ビジネス大賞を受賞した。
中小企業の発展を目的したものとなるが、
安定的に仕事の提供と育児からの社会復帰を応援し、
女性が働くことの難しかった物流業界に
新たな雇用を生み出すことが高く評価された。
「一度家庭に入った女性がもう一度自分のキャリアを築く、
キャリーウーマンを増やしていきたい。
もう一度働きたいけど、どんな仕事をするか迷っているという方は是非相談してほしい」
と宮内社長は語った。
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