■気配り、コミュニケーションに注力
女性ドライバーがいきいき活躍する運送事業者が東京・千代田区に本拠を置く、
なでしこTOKYOだ。
「女性が輝ける舞台を作りたい」という宮内由紀子社長の思いから2014年に創立。
売上は順調に拡大を続け、2018年度の売上高は2億8000万円を記録した。
現在は約40名のドライバーのうち、半数弱が女性となる。
宮内社長は事務代行業の会社を経営していたが、
登録者は全員が女性だった。
当時、宮内社長が危惧していたことがある。
テクノロジーの進化が続き、
AIやロボットの導入で事務代行業が斜陽産業になるのではないか。
登録者は40代の女性が占めていたから、
テクノロジーの波に乗ることは困難だろうと考えていた。
たまたま出席したビジネス交流会で、
宮内社長は物流会社の社長と名刺交換を行った。
ドライバー不足にあえいでいた時代だった。
もともと宮内社長は、物流とのつながりがあった。
最初に就職した会社が物流システムを開発していたため、
物流現場には連日のように足しげく通っていた。
そこで見た物流現場は、男性が多いイメージだったという。
「女性が配達をしてくれるといいな」
宮内社長が以前、女性同士で話していた時に出てきた言葉だ。
物流と女性の結び付きは、遠いイメージだった。
例えば、ひとり暮らしの女性宅への宅配を女性ドライバーが運んでくれたら安心だという意味合いだった。
何気ない会話を思い出し、
宮内社長の戦略は次第に現実味を帯びていった。
女性に特化した軽貨物配送業だ。
配送業務は男性の仕事とイメージされる方が多いが、
女性でもらくに運べるサイズの荷物にすればいい。大事なのは力ではなく、
細やかな気配りと接客。
女性ならではの気配りやコミュニケーションに注力した配送サービスを打ち立てた。
■「女性力」を活かした配送サービス
なでしこTOKYOは女性ドライバーを中心とした
「キャリーウーマン」の事業に特化する。
配送の仕事に携わる女性を対象とした事業を開始したのだ。
花屋さんから受注した配送案件は、
お祝いで発注された胡蝶蘭を店先からの配送を行う。
もともとは店舗スタッフが配送していたが、
店舗でのコア業務に集中するために依頼されたという。
「新規出店、移転、法人設立などのお祝いシーンで利用されるため、
贈るお客様の気持ちまでお届けできるよう、丁寧に明るく接客を心掛けた」と宮内社長は話す。
大手高級スーパーからは、
店頭で購入した商品を買物客の自宅までの配送を請け負った。
宮内社長は「そのスーパーさんは接客レベルがとても高いので、
お届けに上がる際に店舗スタッフの方と同じ気持ちでの接客に力を注いだ」と語る。
ドライバーとエンドユーザーは顔見知りとなるケースがほとんどで、
話し相手になることも多いという。
また、仕出し弁当会社からは弁当の配送を受託した。
配達だけではなく、配膳まで行うことも多いという。
配送に「女性力」を活かしたサービスを付加した求結果、
なでしこTOKYOは業界で唯一無二の物流会社まで成長していった。
(続く)