倉庫業界に大型物流施設が浸透していった背景に、消費者のライフスタイルの多様化が挙げられる。
輸配送を含め、物流に求められる機能を大きく変えていった。
小口貨物の多頻度輸配送が増加するなか、輸配送はもちろん、倉庫内での作業工数は高まる一方だ。
これに対応するのが最新鋭の大型物流施設だ。
荷物を保管する「倉庫」と棲み分けしながら、
高機能型の物流施設ニーズは年を追うごとに高まっていった。
■倉庫特性の変化
物流を取り巻く環境に大きな変化が生じたのは、消費者のライフスタイルが多様化。
例えば、スーパーマーケットの野菜売り場に見られるカット野菜や魚の切り身だ。
昭和の大家族なら、大根やキャベツ、魚を買ってきて、数日間は食材にできていた。
しかし、一人暮らし層や高齢者は持て余してしまう。
そこで必要となったのがプロセスセンターという定義だ。
従来、スーパーのバックヤードで行われてきた生鮮品の加工、
配送を一括して行う拠点を指す。精肉分野での導入が多く、
各店舗で負担となっていたマンパワーを必要とする作業を集約、
1か所の拠点が担うことで店舗作業の軽減を図る。
これも流通加工の一環だ。
流通加工のカテゴリーは幅広い。
物流施設に衛生管理を徹底させたクリーンルームを設け、セットアップ、シュリンク加工、包装などの作業を行う。
食品だけではなく、アパレル、DMの封入封緘など、多岐にわたる。
その作業に最適な空間が「物流センター」だ。
保管に特化した倉庫に、高機能な設備導入や流通加工スペースの確保など、
付加価値を高めていき、大型物流施設のニーズも高まりを見せる。
■鈍化するEC化伸び率と今後の爆発的普及
経済産業省発表によると、2017年の国内BtoC(消費者向け電子商取引)市場規模は、
16.5兆円、前年比9.1%増を記録した。
国内のBtoB(企業間電子商取引)市場規模は317.2兆円(前年比9.0%増)に達している。
しかし、すべての商取引の内、電子商取引が占める割合「EC化率」を見ると米国10%、中国では15%超と伸びを見せるなか、日本では5.79%に過ぎない。
2016年度10.6%、2017年度は7.5%と1桁台で推移した。
世界EC市場ベスト10に入る国の中、桁台の伸び率は日本だけ。
EC化率の低空飛行を続ける現状は、
逆の見方をすると伸びしろを秘めた大きなマーケットが見え隠れする
EC化率の低い最も大きな要因は、
大きなマーケットを持つ食品産業がITによる活性化が起きていないためだ。
二極化が発生、足を引っ張られた形となった。
例えばアパレル産業を例にとると、2017年度の全商取引は14兆2582億円、
うちECサイトなどを介した電子取引の売上高は1兆6454億円を占めた。
オムニチャネル化で実店舗(オフライン)とECサイト(オンライン)の垣根が低くなっていることに反して、
高まりを見せてきたのである。
ECが活発化されていくなか、ますます物流へのウェイトは高まっていく。
もっとも顕著なのは配達スピードだ。
翌日配送、当日配送はおろか、Amazonが開始した「Prime Now」は、
東京・神奈川・千葉・大阪・兵庫の一部エリアで、受注後最短2時間で配達するサービスだ。
食品も対象に、今後も対象エリア拡大していくAmazonへの対抗策は、
物流サービスの拡大がもっとも効果が大きい。
Amazonを尻目に、EC物流の取り込みに躍起となるのが3PL(Third Party Logistics)を展開する物流会社だ。
この10年間で3PL市場の売上規模は倍に拡大したが、3PLのマーケットは成熟しており、新たなニーズの掘り起こしに活用されるのが大型物流施設だ。
■ノンアセット型で高まる生産施設機能
3PLは荷主に対して物流改革を提案、包括して物流業務を受託して遂行する。
そこで使用される施設が、賃貸型の大型物流施設となる。
3PLを行う企業が直近5年間に181拠点を新たに構築した
延床面積440万m2の大型物流施設の約30%は賃貸型施設だった。
3PLを請け負う場合、荷主の業務を請け負う契約期間がネックとなる。
委託にならないリスクも考慮し、賃貸施設を活用するノンアセットが基本となり、
物流施設の在り方を変えていった。
物流センター、特に大型物流施設では保管、出庫といった本来の物流作業以外に、
「生産施設」としての機能を必須となった。
ECに特化する物流センターの場合、コンシューマからのオーダーを受注後、
保管された商品のピッキング、梱包、出荷はもちろんのこと、
施設内に併設されたスタジオで商品の撮影、
返品されてきた商品の検品・再生などをワンストップで行う事例が増えてきた。
3PLとECのニーズは賃貸型施設への大きな追い風となったばかりか、
大型物流施設の過剰なまでの新規供給につながっていった。